コラム Column

2020年02月12日

「節税保険」・・・保険本来の役割とは?

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一大ブームが巻き上がった「節税保険」に対し、昨年2月、国税庁が規制を強化する方針を打ち出しました。

保険料の損金算入できる割合が大幅に引き下げられ、これまでのように、中途解約による節税効果を前面に打ち出す法人向け生命保険の販売ができなくなりました。

 

1980年代中頃までは、「節税保険」の代表格の一つである長期定期保険などは、保険料を全額損金算入できました。

当時は、法人税率が高く、節税効果を加味した解約返戻金の「実質返戻率」は、現在と比較すると、格段に高いものでした。

​​その後、逓増定期保険、長期傷害保険等、新しいタイプの「節税保険」が世に出ましたが、追いかけるように課税ルールが見直され、損金算入割合が引き下げられていきました。

平成の時代に入り、法人税率が引き下げられていったことも重なり、「節税保険」の節税効果は縮小していきます。

それでも、近年、「節税保険」は、大手生保も参入、商品設計が加速化、営業も過熱化し、市場規模はどんどん拡大していきました。

 

そして、ついに、昨年6月、国税庁に止めを刺される結果になりました。

国税庁は「節税保険」にかかる法人税課税ルールの抜本的変更を行いました。

新契約(年換算保険料ベース)は激減、保険会社・保険代理店等に大きな打撃を与えています。

経営環境が目まぐるしく変わる中小企業などにとって、生命保険を活用して、利益を繰り延べられる効果、さらに、天災などの不慮の事態に備え、緊急予備資金として「解約返戻金」を貯めておくことができる、といったメリットは否定できません。

 

​一方、従前より金融庁が公表していると『保険会社向けの総合監督指針』によれば、「法人等の財テクなどを主たる目的とした契約又は当初から短期の中途解約を前提とした契約等」の募集を行わないこと、「保険本来の趣旨を逸脱」することを避け、「商品特性に応じ、その本来の目的に沿った利用」が求められています。

さて、あらためて、「保険本来の趣旨」「本来の目的」とはなんでしょうか?

​慶應3年(1867年)に福沢諭吉が発表した『西洋旅行案内』には、生命保険を「人の生涯を請負う事」と紹介しています。

言うまでもなく、「人の生涯」を対象とする生命保険の原点は、「請負う事=保険(保障)」ということになります。

近年、法人を対象とした生命保険は「節税」を過度に強調し過ぎるあまり、特定の商品に偏り、保障の側面が軽視される傾向があったのかもしれません。

 

ところで、生命保険には、一般に馴染みの深い「生命保険料控除」はもちろん、税法上、とても優位な特徴があります。

死亡保険金は、相続財産として課税対象になりますが、「みなし相続財産」として、「相続税における非課税枠(500万円×法定相続人の数)」の範囲で非課税の優遇があります。

さらに、死亡保険金は、遺産分割の対象とならず、「受取人固有の財産」としてみなされます。原則として遺産分割協議書への記載は不要となり、保険契約で決められた受取人に死亡保険金が支払われます。相続あるいは事業承継等の備えとして、とても重要な効果をもたらすことになります。

これらは、特に、中小企業経営者にとって、「自社株」の相続に際し生命保険を活用する上で、押さえておかなければならない、生命保険の基本的事項です。

 

このような生命保険の特性を考慮したとき、これまで「節税保険」に圧され気味だった「終身保険」なども、「節税保険」に替わる法人保険として、保険選びの検討対象になってくるかもしれません。

 

言うまでもなく、「終身保険」の保険期間は一生涯です。経営に携わる期間が長くなっても、保障切れの心配はいりません。また、貯蓄性も備えた保険です。

もう一つの側面として、保険料の支払方法があります。例えば、経営者が、もし大病を患い、やむなく経営の一線を退くこととなった場合など、「終身保険」であれば、現役でバリバリ活躍している間に保険料をすべて支払い終えることができ(「短期払」といいます)、一生涯の保障を残すことができます。

相続・事業承継に備えるため、将来、法人契約の生命保険を個人契約に名義変更した際(退職金の一部として現物支給)、個人で高額の保険料を負担する必要がなく、相続財産を減少させることがありません。

「終身保険」の保険料は全額資産計上になりますが、中小企業の経営者が事業を安定的に継続するため、その保障の多様性は、一考する価値があります。

 

生命保険は、その保険種類ごとにそれぞれ特徴がありますので、目的にあった保険種類、契約内容の選択が大切になります。

幸い、今回の「節税保険」にかかる規制は、既に加入している生命保険契約は対象外としています。

この機会に、現在加入している生命保険契約について、節税効果の側面に加え、現在の保障内容、将来の活用方法などについて、一度、しっかり確認してみてはいかがでしょう?特に、あらかじめ解約を想定した生命保険契約については、解約後の保障をどのように確保するか?計画的な準備をお願いします。

 

なお、各保険会社により、保険種類ごとの特性、保全手続にかかる留意点(例えば、変換制度の有無等)が異なり、特に注意が必要です。

詳しくは、保険会社へのお問い合わせいただくとともに、その後の対応策、各種制度の活用等については、生命保険とその税務に詳しいファイナンシャル・プランナー、または弊社コンサルタントなどにご相談いただければと存じます。

 

生命保険は、150年以上にわたり「人の生涯を請負う事」を保険本来の役割としてきました。

生命保険の見直しに際して、くれぐれも保障切れがないように、ご留意ください。