2015年08月13日
抜け穴は塞がれる?
こんにちは(^O^)/平成27年8月11日の日経新聞に「使途秘匿金1054法人60億円」という記事が掲載されていました。
使途秘匿金とは、法人からの金銭支出や金銭以外の資産の支給のうち、支出(支給)先の相手の名称や所在地が帳簿等の記録に残されないものです。
使途秘匿金は、課税所得計算上の損金とすることができず、通常の法人税に加えて支出額の40%が制裁課税されます。これに地方税が加わることになり、約90%の税負担となります。
この課税は、赤字法人であっても課されます。
使途秘匿金は、不透明な支出で、違違法性が高いと判断されるため、このような制裁課税が設けられています。
記事によれば、業種別の課税額は建設業(11億円)が最も多く、卸売業(3億円)とサービス業(3億円)が続いたそうです。
記事では、「必要悪として商取引に介在させる日本の慣習は国際社会では通用しない」という識者の意見が紹介されていますが、実際のビジネスでは、使い道を秘匿せざるを得ないこともあるのかも知れませんねぇ…。
さて、納税通信2015年8月17日号に「税務調査の実態と調査官の本音 一般社団法人という抜け穴」という記事が掲載されていました。
この記事では、一般社団法人に財産を買い取らせる形での相続税対策が広がっていますが、このスキームのメリットに比して、国税による防止措置が非常に甘い状況であることが紹介されています。
記事では、現在の一般社団法人を活用して相続税を節税するというスキームが武富士事件を思い出させると解説されています。
武富士事件では、抜け穴のある法律を利用した納税者に対し、国税が難癖を付けて課税をし、裁判になりました。最終的に納税者が勝ちましたが、法律は改正され、抜け穴は塞がれました。
一般社団法人も大きな類似性があると解説されています。
国税としては、敗訴覚悟で、大きな節税をしている納税者を槍玉に、裁判沙汰にして注目を集めて改正を実現する、というのが王道的なやり方だそうです。
このため、近いうちに強行的な処分がなされる可能性が大きいのではないかとのこと。
平成20年12月1日からスタートした「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」(以下、「一般法」といいます)により、一般社団法人は設立、利用できるようになりました。
一般社団法人は、「持分」がないということが最大の特徴です。
この特徴を利用して、相続税対策に利用するスキームが広がっています。
一般社団法人が保有する財産は、個人の相続財産からは切り離されますので、一般社団法人に財産を移すことは大きな相続税対策となります。
ただし、個人から一般社団法人へ財産を移動する手段は、基本的には、「売買」になります。
移動する財産の価値が大きく、取引価格が大きくなり、取引が現実的でない場合があります。
移動する財産に含み益があり、売買取引の際に、含み益が実現し、財産を手放す個人に課される譲渡所得税の絶対額が大きくなりすぎて、取引が現実的でない場合があります。
取引価格や譲渡所得税という障害をクリアして一般社団法人へ財産を移しても、現在得られるメリットが将来においても約束されているわけではありません。
一般法や税法が改正されれば、そのメリットは消滅するかもしれません。
メリットがなくなる程度であれば良いのですが、一般法や税法の改正により、対策実行前よりも不利な状況となったり、不利益が実現してしまう可能性も否定できません。
弊社では、お客様に一般社団法人の活用をご提案する際、このような注意事項について必ずご説明を差し上げ、理解していただくようにしています。
記事でも紹介されているとおり、一般社団法人の制度はスタートしたばかりで、税法の整備が遅れている状況と言えるでしょう。
物事にメリットだけというものはありません。必ずメリットとデメリットが存在します。
一般社団法人を活用するといった新しい取り組みを検討する際には、デメリットやリスクを明示してくれるアドバイザーを選択することをお勧めいたします。