コラム Column

2020年10月05日

菅政権誕生でどうなる中小企業向け税制?!大再編時代到来か?!

 

菅総理大臣が誕生しましたね。基本的には安倍政権の政策を継承するとの事ですが、中小企業向けの政策については大きな変化があるかも知れません。

 

9月5日、日経新聞による菅官房長官(当時)へのインタビュー記事です。

「日本経済新聞のインタビューで中小企業の統合・再編を促進すると表明した。中小の成長や効率化の阻害要因とも指摘される中小企業基本法の見直しに言及した。アベノミクスの継承と同時に、グローバル市場における日本経済の競争力強化に政策の照準を定める」

また、同記事にはこうもあります。

「日本の中小企業は現在、小規模事業者を含め約358万社あり、企業全体の99.7%を占める」、「中小企業白書によると従業員一人当たりの付加価値を示す<労働生産性>の中央値は大企業の585万円に比べ、中規模企業は326万円、小規模企業は174万円にとどまる。企業規模が小さくなればなるほど生産性が下がる傾向がある」

 

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63502940W0A900C2EA2000/

 

安倍政権時代から、大企業と比較して中小企業の低い生産性の向上は大きなテーマでした。だからこそ中小企業の生産性向上を支援する為に、「中小企業向け」に様々な補助金、助成金、税制措置が講じられてきました。

 

菅首相の発言で注目したいのは、中小企業基本法の見直しに言及している点です。

中小企業基本法では、業種、資本金、従業員数によって中小企業者を定義しております。基本的に、資本金、従業員数が一定の規模を超えると(=規模が大きくなると)、中小企業者ではなくなり、様々な税制措置等の優遇が受けられなくなります。

 

安倍政権の中小企業向け税制の殆どは、この「中小企業基本法によって定義された中小企業者」を支援する内容でした。

菅首相はどうでしょうか?先程の記事によれば、そもそもこの「中小企業基本法を見直さなければならない」と考えている様です。

安倍元首相と菅首相は、中小企業の低生産性を向上させなければならない、と言う根底の問題意識は同じでも、そのソリューションは大きく異なる可能性があります。

 

他の識者の意見も参照してみたいと思います。

①一橋大学 宮川大介准教授

―2020年6月18日 日経新聞やさしい経済学―より抜粋

「企業の規模を参照しながら、特別なメニューを提供する政策は<size-dependent policy>と呼ばれます。税制が典型例ですが、この政策は各国で広く採用されています。しかし、既に幾つかの学術研究で指摘されている通り、こうした政策は、対象となる一定規模(閾値=しきい値)付近に企業が集まる<バンチング>と呼ばれる現象を誘発します。結果として、企業が本来持っている成長可能性を阻害している恐れがあるのです。」

「日本の中小企業は、資本金と従業員数基準で定義されており、同様のバンチングが生じる可能性があります。」

 

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO60453000X10C20A6KE8000/

 

②デービット・アトキンソン氏、小西美術工芸社社長

日本経済への様々な提言や菅主張のブレーンとしても知られるアトキンソン氏の記事です。

―2020年3月27日日経新聞朝刊―より抜粋

「日本の産業構造は大企業が少なく、その大企業も規模が小さい。中堅企業も少ない。大半は規模の小さな中小企業が占めている。日本企業とは、中小企業なのである。」

「経済学の鉄則通り、大企業は中堅企業より生産性が高く、中堅企業は小規模の事業者より生産性が高い。この大原則に基づけば、中小企業が増えれば増えるほど国全体の生産性が低下することになる。」

「先進国の中で、ドイツや米国のように大企業と中堅企業を中心とした経済は強く、イタリア、スペイン、韓国や日本のように、小規模事業者が多ければ多い国ほど、産業構造が弱いのだ。生産性は結局のところ、その国の経営資源がどういった産業構造に配分されているかによる。人材の良しあし、イノベーション能力、技術力、勤勉性などで生産性が決まるわけではない。そういった経営資源を産業構造の中でどう生かすかが重要なのだ。」

「生産性を高めるためには、一定以上の規模が必要となる。そして継続的に向上させるには規模の拡大が欠かせない。現在の日本企業は成長していない。成長しないから、生産性があがるわけがない。」

「成長しない理由は二つある。一つは政策だ。中小企業の優遇が厚くなればなるほど、多くの企業は中小企業を卒業したがらなくなる。」

「日本では中小企業への優遇策が手厚い。いわば国策によって、生産性が上がらない構造をつくってきたといえる。」

「日本は人口減少社会になった以上、いかなる企業も大企業や中堅企業を目指すという政策に切り替えるべきだ。」

と記事にはあります。

 

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO57255400W0A320C2TCR000/

 

相対的に生産性の低い中小企業への支援策そのものが、中小企業を生産性の高い大企業へと成長させる阻害要因そのものである、と、かなりはっきりした主張ですね。

 

中小企業基本法の見直しに言及した菅首相も、日本の生産性の低さは中小企業向け優遇措置によって小規模な企業が多く存在している、その構造に問題があると考えているのではないでしょうか(それが正しいかどうかは別として)。

菅首相の中小企業向けの政策は、安倍政権とは大きく異なるのかも知れません。

 

日本企業の生産性向上のソリューションは、「中小企業に対する支援」から「中小企業の規模拡大の支援へ」変わっていくのでしょうか?

ではその具体的な施策はどういったものなのでしょうか?M&Aによる規模拡大の優遇策?規模拡大を奨励する税制の創設?今後の動向を注視しておきたいですね。

 

なお、9月末に「令和3年度税制改正に関する経済産業省要望」が発表されました。

従来から中小企業の設備投資等を税制面から支援してきた「中小企業経営強化税制」「中小企業投資促進税制」「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」や「中小企業等の法人税率の特例」等はとりあえず延長の要望がなされております。

無事に延長となれば、引き続き積極的に活用していきたいですね。

 

https://www.meti.go.jp/main/zeisei/zeisei_fy2021/zeisei_r/index.html