コラム Column

2019年12月03日

海外中古建物税制改正動向

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海外中古建物の減価償却に関する税制改正情報が飛び交っています。

第一報は10月31日でした。専門家向けサイトで「海外中古建物を使った節税スキーム、令和2年度税制改正で封じ込め 平成30年度改正では見送りも、ついに実現へ」というタイトルで報じられました。

そもそもは、会計検査院の「平成27年度決算検査報告」にて「国外に所在する中古の建物に係る所得税法上の減価償却費について」という指摘がなされたことが事の発端でした。

平成27年度決算検査報告 国外に所在する中古の建物に係る所得税法上の減価償却費について

上記指摘のなかの「本院の所見」では次のように報告がなされています。

「日本とアメリカ合衆国、英国等では、建物を取り巻く状況が大きく異なっているが、国外に所在する建物に対しても国内に所在する建物と同一の税制が適用されることとなっている。そして、国外に所在する中古等建物の中には簡便法に基づき耐用年数を算定したものが相当数あると見込まれる。このような背景の下、国外に所在する中古等建物について、賃貸料収入を上回る減価償却費を計上している納税者が多く見受けられる状況となっている。また、簡便法により耐用年数を算定する場合に用いられる割合は、昭和26年に定められて以降現在まで変わっていない。

このことを踏まえると、国外に所在する中古等建物については、簡便法により算定された耐用年数が建物の実際の使用期間に適合していないおそれがあると認められる。そして、賃料収入を上回る減価償却費を計上することにより、不動産所得の金額が減少して損失が生ずることになり、損益通算を行って所得税額が減少することになる。

したがって、本院の検査によって明らかになった状況を踏まえて、今後、財務省において、国外に所在する中古の建物に係る減価償却費の在り方について、様々な視点から有効性及び公平性を高めるよう検討を行っていくことが肝要である。

本院としては、中古の建物に係る減価償却費について、引き続き注視していくこととする。」

 

会計検査院から上記のような報告がなされた場合、2~3年で税制改正になることが一般的です。海外中古建物を取り扱う面々は戦々恐々としていましたが、平成29年度税制改正ではもちろん、平成30年度税制改正、平成31年度税制改正でも海外中古建物の減価償却に関する税制改正内容は盛り込まれませんでした。昨年、減価償却制度の見直しは色々難しい点があり、時間がかかりそうだという記事が日経新聞に掲載されました。令和2年度の税制改正要望にも海外中古建物に関する改正内容は盛り込まれていないように見られていました。そんなこともあり、海外中古建物を取り扱う業者内では、税制改正はもう少し先の話しだろうという空気が流れていました。

しかし、先述のとおり、10月31日の第一報。業界が凍り付きました。この段階では、まだ具体的な改正内容は分かっていませんでした。

 

そして、11月7日の第二報。業界に激震が走りました。

「海外中古建物を利用した節税スキーム、減価償却費の経費計上を不可に」という改正内容が報じられました。

多くの人が短い耐用年数の適用を変更するないようになるであろうと予測していたものと思われます。ところが改正内容は、所得税の所得計算をするうえで、そもそも海外中古建物の減価償却費の経費計上を認めないという荒業が検討されていることが明らかになりました。本スキームは、多額の減価償却費を計上することで不動産所得に損失を生じさせ、給与所得等と損益通算を行うことで、総合課税に係る所得金額及び所得税を減少させるのですが、総合課税に係る所得金額の計算上、海外中古建物に係る減価償却費は経費としてカウントされないことになるというのです。

予想もしなかった改正内容です。

 

さらに11月21日、第三報が報じられました。「保有目的は考慮せず、海外中古建物に係る減価償却費の経費計上は認めない」方向である旨の報道がなされました。

 

そして、ついに11月26日に日経電子版で、よく27日には日経新聞で「海外住宅投資の節税認めず 政府・与党、富裕層課税強化へ」という記事が掲載されました。日経の記事がでるまでは、専門家サイトでの報道でしたが、日経の記事はインパクトがありました。業者によっては、投資家からの問い合わせが殺到したようです。

 

過去に取得した海外中古建物に係る減価償却費の取り扱いはどうなるのか、注視している投資家も多いと思われます。私見ですが、報道の文面を見る限り、過去に取得した海外中古建物に係る減価償却費であっても、税制改正後は所得計算上経費算入が認められないということになると考えます。

いつから適用でしょうか。これは、11月28日に報じられた第四報にて明らかになりました。「令和3年分以後の所得税から適用」とのこと。また、まったく減価償却費の経費計上が認められないのではなく、海外不動産所得がゼロになるまでは減価償却費の計上が認められる方向性のようです。

簡便法不使用であれば減価償却を経費算入できる方向性のようですが、見積法により耐用年数計算した場合には、見積年数が適正であることを証明する一定の書類の添付がなければ封じ込め策の対象となるようです。

いずれにしても、これまで個人投資家が得られていた節税効果はなくなってしまいます。

 

税制改正の内容は、まだ明らかになったとは言えません。12月2週目ないし3週目には令和2年度税制改正大綱が発表され、そこで改正内容が明らかになるものと思われます。投資家の皆様は、改正内容を確認してから今後の対応を検討することをお勧めします。

 

今回の、税制改正騒動、業者側にも影響が出ています。

東証1部上場会社であるオープンハウスは、新築戸建て分譲やマンション開発で有名ですが、海外中古不動産も手広く展開しています。11月26日、27日の日経新聞の報道を受け、株価が16%以上下げました。この事象に象徴されるように、取り扱い業者の業況にダイレクトにマイナスの影響がでます。

税制改正になっても、投資家はすぐに物件売却できるわけではありません。業者の物件管理は続きます。しかし、新規投資は著しく減る可能性があります。少しずつ管理物件が減る中で、最後まできちんと管理をしてくれる業者はどこでしょうか。業者の選別も進むと思われます。

不測の事態が生じたときに信頼できる管理会社であるか。国内不動産投資でも重要な観点ですが、海外不動産投資ではなおさらであることを改めて感じさせられる今回の税制改正です。