コラム Column

2021年09月21日

中小企業経営者のための一番わかりやすい「事業承継」のトリセツ

Contents

規模に関係なく、存続する会社というのはそれだけで大きな価値があるもの。

働く従業員、取引先、経営者、家族、顧客に価値を認められているからこそ、会社のいまがあるからです。

その会社と事業の継続を願い、後継者に引き継ぐ「事業承継」。

長い経営者人生の締めくくりとしての「事業承継」はもちろん、自社株式の「事業承継」や、ノンコア事業の切り離しによる「事業譲渡」など、さまざまなパターンが存在します。

どの方法を選ぶかによっては、経営状況を左右しかねません。

また、後継者がすでに見つかっていたとしても、そもそも「事業承継」とはどのように進めればいいものなのか。

どれぐらいの時間がかかるのか。何から手を付ければいいのか……。

不明点や疑問点が多すぎて、つい先送りにしたくなるもの。

けれども、早い時期から計画を立てて慎重に進めていけば、必ず良い結果につながるはずです。

今回はこの貴重な機会を会社のさらなる発展につなげるべく、「事業承継」のトリセツをわかりやすくまとめてみました。

 

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 第1章:事業承継ことはじめ~後継者に会社と事業を引き継ぐ「事業承継」

「事業承継」の定義をわかりやすく

事業や会社そのものを、後継者に引き継いでいくことを「事業承継」ということは、みなさんよくご存じですよね。

引き継がれるものは、通常次の3つとなります。

【経営】……会社の経営権と、その会社で働く従業員などを引き継ぎます

【資産】……株式および事業を進めるために必要な事業用資産を引き継ぎます

知的資産】……技術、技能、特許、ブランドといった “目に見えない経営資源”も引き継ぐことがあります

実際に引き継がれるものはケースごとにそれぞれ違いますが、「事業承継」が単に「経営権を移すこと」だけではないということが、おわかりになったのではないでしょうか。

引き継いだ後も滞ることなく経営を続けていくために、“経営・事業に必要なあらゆるもの”を引き継ぐのが「事業承継」なのです。

「事業承継」の基本的な流れをわかりやすく

さまざまな形がある「事業承継」ですが、基本的には次のような流れで行われます。

 

1・経営状況や経営課題の明確化】

「事業承継」を円滑に進めるためには、現在の経営状況と課題を後継者に伝えなければなりません。会社の資産や状況を明確にするために、正確な決算書などを作成していきます。

2・経営の改善】

現時点での課題を解決することも、「事業承継」を円滑に進めるための有効な手段。業績や固定資産を改善することはもちろん、取引先や金融機関との関係性を意識することも重要です。

3・具体的に計画する】

「事業承継」の具体的なやり方や、引き継いだ後の経営方針など、「事業承継」に関する計画を策定していきます。後ほど詳しく解説していきますが、「事業承継」は方法によって特徴がかなり違うため、要注意です。

4・事業承継を実行する】

以上の準備が整い次第、計画をもとに「事業承継」を実行していきます。

「事業承継」を進めるためには、この流れに沿ったさまざまな準備が必要です。

 

とくに【2・経営の改善】が含まれることを考えると、準備だけで数年以上もの時間が必要となることがわかりますね。

後継者や従業員の負担を減らすため、「事業承継」を考え始めた段階から早めに行動して、準備を万全に整えることが成功への第一歩だと覚えておいてください。

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「事業継承」とは何が違うのか?をわかりやすく

「事業承継」と「事業継承」、よく似通ったふたつの言葉。

どちらを使うのが正しいのか、疑問に思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。

双方ともに同じような意味に見えますが、厳密にいうと次のような違いがあるそうです。

承継】先代からのものを受け継ぐこと

【継承】先代から身分や仕事、財産などを受け継ぐこと

このことから身分や仕事、財産のほか、会社の文化や先代の精神といった“目に見えないもの”まで引き継ぐことが「事業承継」なのだということがわかりますね。

このほか“伝統”や“のれん”なども、引き継ぐものです。

先代から会社・事業を引き継ぐケースのほとんどが「事業継承」ではなく「事業承継」といわれている所以が、おわかりになったのではないでしょうか。

 

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第2章:事業承継のさなか~慎重に決めたい引き継ぎの内容

「事業承継」の三大要素は「人・資産・知的財産」

「事業承継」では、「人・資産・知的財産」の3つが引き継がれることを先にお話ししましたね。

これらは「事業承継」の「3つの構成要素」と言われるほど重要なものなので、各要素についてもう少し詳しく解説していきます。

 

【1・人】

「事業承継」によって引き継がれる「人」とは、経営者のこと。企業の内情は、経営者の交替によって大きく変化します。代わった後の状況を考えながら、慎重に後継者を選びましょう。

経営者個人に事業の知識と技能および人脈が集中してしまっている企業はとくに、後継者にすべてを円滑に承継できるか否かが、成功を左右する大事なポイントとなります。

【2・資産】

株式や事業用資産、会社の資金などを指します。「事業承継」では、このような資産を引き継ぐことはもちろん、以降後継者が負担することになる税についても忘れてはなりません。

節税対策をしなければ、多額の相続税や贈与税が発生するおそれも。資産の「分散承継」も考えておきたいポイントの一つです。

【3.知的財産】

経営者の理念やノウハウ、信用、人脈、顧客情報といった、財務諸表上に記載されない会社の財産のことを指します。知的財産をうまく引き継ぐことができなければ、競争力を失ってしまうことも。

そのぐらい知的財産は会社の将来性への影響が大きいもの。引き継がせる知的財産の選択は、慎重に検討していきましょう。

 

以上「3つの構成要素」は「事業承継」の肝となる部分なので、時間をかけてじっくり選んでくださいね。

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身内かM&Aか…「事業承継」で選ぶ4つの選択肢

「事業承継」には大きく4つの選択肢があります。まずはその概要を知っておきましょう。

 

【1・親族内承継】

経営者が、配偶者や子どもなどの親族に事業承継をすることを「親族内承継」と言います。この「親族内承継」には、方法が3つもあることはご存じでしょうか。

生前贈与による事業承継・・・・経営者が健やかなうちに、贈与契約書を交わして「事業承継」をすること。特定の人物に資産を残すことができますが、後継者には贈与税が発生します。

相続による事業承継・・・・経営者が死亡したときに、生前に用意した遺書に則って「事業承継」を進めること。こちらも後継者には相続税が発生します。

売買による事業承継・・・・後継者が株式などの購入資金を用意し、会社と事業を買い取ります。会社の規模によっては、多額の資金を用意する必要があります。

このうち「相続」は、思わぬトラブルに発展する恐れがあります。

相続人が複数いた場合、ほかの相続人に「遺留分」を求められる可能性があるからです。

遺留分とは、相続人に最低限認められる権利のこと。

その権利は遺書においても侵害できません。

特定の後継者に資産を引き継ぎたくとも、難しくなってしまうのです。

そのため、「相続」での「事業承継」を選ぶ際には、ほかの相続人に対する配慮も十分に行うことがポイントです。

また、会社の状況次第では、リスクまで引き継いでしまうということも忘れないでくださいね。

たとえば会社の信用性が低い場合、借り入れをしている金融機関から「後継者に個人保証を引き継いでほしい」と求められる可能性もあります。

会社の負債まで引き継がれることになるため、いまの経営者は、ゆくゆくは後継者が抱えるであろう負担までもしっかりと考えて、同時に債務整理も進めておくことが重要です。

【2・親族外承継】

「親族外承継」とは、親族以外の人物に株式を買い取ってもらう「事業承継」の方法。

後継者として、経営能力のある役員や従業員を指名するケースがこれに該当します。

親族外承継では、社内・社外から広く後継者を探すことが可能です。

会社や事業の規模によっては、多額な買取資金が必要となるケースもありますが、社内の人物を後継者にする場合は、従業員からの理解を得やすいもの。

新しい経営者として、長年会社に尽力した人物が就任するのであれば、従業員も安心して業務に臨めることでしょう。

ただし親族内承継と同じく、親族外承継においても個人保証などのリスクが一緒に引き継がれることをお忘れなく。

多額の負債の存在や、個人保証の引き継ぎが確実な状況である場合は、資金を費やしてまで引き継ごうという後継者はなかなか見つからないかもしれません。

【3・M&A】

会社・事業を、ほかの企業に買い取ってもらう方法を「M&A」と言います。

M&Aと聞くと乗っ取られのようなネガティヴなイメージを思い浮かべる人もいることでしょう。

しかし、後継者不足の解決策として非常に効果的であり、近年では多くの中小企業がM&Aに取り組んでいます。

自社の株式を売却することになるので、会社・事業の売却益が現経営者の手元に残ります。

そのため、売却時点での企業価値が高ければ、多額の利益を得る場合もあります。

後継者問題を解決できる点や、経営者本人の個人保証を解除できる点なども魅力ですね。

ただしM&Aでは、経営方針や事業内容はもちろん、従業員の処遇についても契約の範囲内で譲受企業(買い手)が決めることになります。

それが仮に希望条件に合わなかったとしても、経営権を失ってからではどうしようもありません。

また、状況によっては希望する買い手が見つからない可能性も。

経営者本人が見落としてしまっている自社の魅力もあるので、上手にアプローチすることが肝となるでしょう。

【4・株式上場】

自社株式を証券市場に上場して、不特定多数の投資家に購入してもらう方法です。

上場できれば経営と資本を分離可能。

さらに株式売却による資金調達も実現できます。

しかし上場には審査が設けられており、多くの中小企業は要件を満たすことが難しいのが現状です。

また、準備に数年単位の時間が必要な点も中小企業にとってはネックです。

「事業承継」が迫る企業では、株式上場はあまり現実的な手段ではない場合があります。

 

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いかがでしたでしょうか。

かつては、経営者の子や親族などに事業を承継する「親族内承継」がほとんどでした。

しかし今は、親族内での後継者確保が困難になっていることや、「事業承継税制」の新設・改正の影響を背景に、経営者と親族関係では無い役員や従業員を後継者にする「親族外承継」、社外の第三者に会社や事業を譲渡する「M&A」の割合が増えています。

とはいえ、身内に引き継ぐことにこだわるといった理由から、「事業承継」に取り組めていない企業もまだまだ多いもの。

身内に引き継ぐか、第三者に引き継ぐかに関わらず、後継者を決める際は、次期経営者として資質のある人を選ばなければなりません。

経営を取り巻く環境変化に対応しながら、事業を継続・成長させていくことができる人物を後継者として選定するのがベスト。

ちなみに候補者が複数いる場合は、判定基準を示して選定を進めると、「後継者争い」などのトラブル防止になります。

また、後継者を社長に、経営者は会長に就任して、以後段階的に権限を後継者に委譲していく方法も。

いま現在「事業承継」の展望が持てていない企業は、あらゆる方法に焦点を当てて「事業承継」の実現を目指すことが重要です。

 

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中小企業の「事業承継」メリットとデメリット

このように「事業承継」には4つの方法があり、方法ごとにメリット・デメリットが異なります。

多くの選択肢を考えておくべきですが、「事業承継」では以下でまとめたメリット・デメリットもしっかりと整理したうえで、慎重に計画を立てることが必要です。

 

【親族内承継のメリット・デメリット】

<メリット>

・会社や資産を身内に残せる

・従業員からの理解を得やすい

・経営能力のある身内がいれば後継者を探さずに済む

<デメリット>

・適任者が見つからない場合がある

・個人保証や債務などのリスクも引き継がなければならない

・相続人同士のトラブルに発展する可能性がある

【親族外承継のメリット・デメリット】

<メリット>

・社内および社外から幅広く後継者を探すことができる

・従業員たちの理解を得やすい

・社内の人材を選べば業務の引き継ぎもスムーズ

<デメリット>

・株式の買取資金が必要となる

・適任者が見つからない可能性がある

・個人保証や債務などのリスクも引き継ぐ

【M&Aのメリット・デメリット】

<メリット>

・売却益を手元に残すことが可能

・個人保証を解消

・後継者問題を解決できる

<デメリット>

・経営権を失くす

・希望条件に合う買い手が見つからない

・企業文化や体制が大きく変わってしまう恐れがある

【株式上場のメリット・デメリット】

<メリット>

・経営と資本を分離可能

・資金調達手段としても活用可能

・社会的な知名度の上昇

<デメリット>

・上場審査のハードルが高い

・準備に数年単位の時間がかかる

・経営の自由度が下がる

 

とくに株式上場以外の方法については、メリット・デメリットのみならず、具体的な流れや周りへの影響もきちんと押さえておきましょう。

 

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中小企業の「事業承継」に立ちはだかる3つの課題

経営者なら誰しも、手塩にかけて育て上げた会社の行く末が気になるはず。

高齢に差し掛かる前に、「事業承継」の準備をしておきたいと思われる方も多いことでしょう。

けれども、実際には「事業承継」がうまくいかず、そのまま廃業してしまう中小企業も数多く見受けられます。

会社を自分の代で終わらせざるを得なくなった理由としては、どんなことがあるのでしょうか。

 

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【全国の3分の2の企業が後継者不足】

帝国データバンクは、事業承継の実態について、分析可能な約26万6000社の事業承継動向を調査しています(『全国企業「後継者不在率」動向調査(2020年)』)。

結果は次の通りでした。

・約26万6000社の後継者不在状況は、全体の約65.1%に当たる約17万社

・社長年代別では、「30代未満」「80代以上」以外で後継者不在率が前年(2019年)と比べて低下。「40代」以降の後継者不在率は調査開始以来で最低となり、「50代」では初めて不在率7割を下回った

・2020年の事業承継で最も多いのは「同族承継」。「内部昇格」は34.1%となり、同族承継の僅か0.1pt差に迫る

・後継者候補では「子供」が最も高い40.4%で、前年から0.3pt増加した

これによると、日本企業の後継者不在率は65.1%。全企業のうち3分の2は後継者がおらず、今すぐ「事業承継」を進めることができないでいるのです。

もちろん、全企業が事業承継を望んでいるわけではありませんが、中小企業にとって後継者不足は深刻な問題になっていることがわかりますね。

また日本政策金融公庫の調査では、60 歳以上の経営者のうち 50%超が将来的な廃業を予定しているそうです。

このうち「後継者難」が理由の廃業が、全体の約 3 割。

実際に、休廃業や解散した企業は新型コロナの影響もあって、年3万件から4万件台へと年々増加傾向にあるのです。

事業が黒字でも後継者が見つからないことから廃業を選択する企業は多く、このまま日本経済と雇用を支える中小企業の多くが廃業してしまえば、業界はおろか国の経済までも傾きかねません。

【高齢経営者の増加】

この後継者不足問題から、1940年代後半に生まれた団塊世代の経営者が増えています。

後継者が見つからないことから、仕方なく経営を続けているケースも少なくないからです。

健康なうちは問題ありませんが、年齢を重ねるごとに気力と体力は落ちていくもの。

後継者が見つからないまま働けなくなると、その会社はそのまま廃業とならざるを得ません。

今後数十数年以内に、多くの中小企業が廃業しかねない状況に直面している点は、しっかりと理解しておくべきでしょう。

【政府も積極的にサポート】

とくにコロナ禍の今は、後継者が不在のなか、新型コロナウイルスによる業績悪化などが追い打ちとなって事業継続を断念する事例が想定されており、その回避策としての「事業承継支援」が今まで以上に注目を集めています。

2021年には、以前からあった経営革新や事業転換をする中小企業を支援する「事業承継補助金」と、経営資源を第三者に引き継ぐときの費用を補助する「経営資源引継ぎ補助金」がまとめられた『事業承継・引継ぎ補助金』の公募が開始されました。

「事業承継・引継ぎ補助金」は、「経営革新」と「専門家活用」の2種類にわかれています。

一次公募の結果を見ると「経営革新」については申請総数335件のうち167件。「専門家活用」については申請総数412件のうち346件の交付が決定。また、続く二次公募の結果は「経営革新」については申請総数375件のうち187件、「専門家活用」については申請総数419件のうち330件に交付が決定されています。

三次公募があるかどうかは未定ですが、このように政府も「事業承継」を重大な課題として認め、積極的にサポートする姿勢を見せているのです。

【内部昇格による「事業承継」が「同族承継」と同程度】

帝国データバンクは、こうした後継者問題に対する支援が、後継者不在率の改善につながっているとの見方を表しました。

2018年以降に「事業承継」をした全国約3万3000社について、先代の経営者との関係性をみたときに、2020年の事業承継は34.2%と「同族承継」が最も多くありました。

しかし、2018年から大きく下落。

反対に増えつつあるのが、身内ではない役員などを登用した「内部昇格」で34.1%です。

もはや同族承継の0.1pt差までせまっています。

2020年の就任経緯の割合は以下。()内は2018年調査との差です。(『後継者不在率、2011 年以降で最低を更新 全国で 65.1%、3 年連続で低下』

同族承継……34.2%(▲8.5ポイント)

内部昇格……34.1%(+2.7ポイント)

その他 ……18.6%(+3.3ポイント)

外部招聘……8.3%(+1.4ポイント)

創業者 ……4.8%(+1.0ポイント)

しかし中には、営業力や財務内容、事業将来性が低評価のため支援が叶わず、事業承継ができないまま廃業に至る後継者難の倒産も出ています。

そのため帝国データバンクは「今後は、ビジネスモデルや事業の将来性が見込める企業へ支援のリソースを集中させるなど、事業承継支援の在り方=「質」の変化にも着目して動向をみる必要がある」と説明。

コロナ禍のピンチをチャンスに変えられるかどうかは、経営者がこの支援をうまく活用できるかどうかにかかっているのです。

 

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「事業承継」のリスクファクターと失敗例

「事業承継」は国を挙げての喫緊の課題だとお伝えしてきましたが、実際にはさまざまなリスクファクターが潜んでいます。

そのため、決して安易に進めるべきではないものであることもしっかり認知しておかなければなりません。

具体的なリスクファクターとしては、主に以下のものが挙げられます。

・後継者の能力が不足している

・相続税や贈与税の負担

・従業員のモチベーションが低下

・親族間の相続争い など

また進め方によっては、その企業がもつ価値や財産が無くなってしまう点も経営者が気を付けておきたいリスクです。

たとえば、これをきっかけに独自の知識や技術、強みがなくなってしまうと、競争力を失った挙句に売上や営業利益がどんどん縮小してしまいます。

【従業員の反発や派閥…事業承継の失敗あるある】

ほかにも、事業承継の失敗例は数多く存在しています。

次に、中小企業が気を付けるべきよくある失敗例をまとめました。

・人望のない後継者に従業員が反発

・事業承継後のフォローをしなかったため、会社の経営が一気に崩れた

・親族間コミュニケーションが不足しており、会社内で承継後に派閥争いが始まった

・現経営者が急に亡くなったため、後継者が見つからないまま倒産することに

「事業承継」を円滑に進めるためには、親族や従業員といった周囲の理解がなくてはなりません。

経営者が独りよがりで計画を進めると、反感や反発が生じてしまうもの。

丁寧なコミュニケーションを重ねながら進めることが重要です。

【ほどよい距離感で後継者フォローも忘れずに】

また、不安を抱えたまま後継者が会社を引き継ぐケースもよくあること。現経営者は「承継後のフォロー」も忘れないでください。

ただし、引退した経営者が強い影響力を持つと、後継者の成長によくありません。結果的に会社の競争力の低下につながりますから、後継者をフォローする際には「ほどよい距離感」を意識してください。

口出しをするのではなく、あくまでも「アドバイス」としてフォローをすることが重要です。

以上のように、知識不足のまま「事業承継」に取りかかると、会社にはさまざまな弊害が発生してしまいます。

会社や従業員を守るために、正しい知識を身につけたうえで慎重に計画を立てていきましょう。

 

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第3章:事業承継ことおさめ~最後に心がけておきたいこと

ここだけは押さえておきたい!事業承継に取り組む中小企業のためのポイント

これから「事業承継」に取り組む中小企業は、ここまでにお伝えした基礎知識のみならず、いくつかのポイントを押さえて計画を立てることが重要です。

ケースによって意識するべき点は多少異なりますが、以下では特に押さえておきたいポイントを4つ解説します。

【原則として早めに取り組むべし】

どのような方法で「事業承継」を進めるにしても、準備に長い期間を要します。

とはいえ、準備不足の状態で進めると、周りから理解を得られなかったり、経営に悪影響を与えるリスクが高まるので、早めに準備にとりかかることが原則です。

経済産業省の「中小企業白書」によると、後継者探しに3年超の年月を費やす企業が37.1%、さらに育成や引き継ぎに必要な時間を考えると、実際には5~10年程度かかるケースも。

中小経営者は「まだ健康だから大丈夫」と安易に考えず、余裕のあるうちに行動を始めておくことが重要です。

 

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 【「譲る側」が能動的に取り組む】

「事業承継」は譲る側が能動的に取り組まない限り、まったく動きません。

「経営の移譲」や「株式の移譲」も同様です。

多忙な経営者にとっては実行に移すきっかけが無く、後継者を育てる時間が無いままに月日が過ぎてしまったというケースがほとんど。

しかし後継者からすれば、いくら身内でも「事業承継」について自分からは言い出しにくいもの。

相続税や議決権なども絡んでくると、整理に時間もかかります。

「いずれ子どもが継いでくれる」とぼんやりと思っているだけで、実際に子どもがいつ会社に入社し、どのようなポジションでどんな仕事をするか、具体的なことを決めていない経営者の方も多いようです。

これは、譲る側が能動的になっていないため。

その結果として、子どもから「継がない」と言われてしまうケースもたくさんあります。

事業承継を考える上で最も重要なことは、譲る側が能動的になって、いつ、誰が、何をするかを明確にし、それを後継者や周囲にきちんと合意を得ておくことなのです。

 

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 【中小企業の事業承継をサポートする制度「事業承継税制」】

また、中小企業をサポートしている各制度も取りこぼしのないよう活用しましょう。

代表的なものとしては、中小企業がもっと円滑に事業承継をできるようにと政府が打ち出した「事業承継税制の特例措置」です。

そもそも「事業承継税制の特例措置」とはどのような制度なのでしょうか。

これは、相続した自社株の全株式に対し、100%の納税猶予が受けられるというものです。

当面の納税額はゼロ円となります。

「贈与税・相続税がゼロ!」と聞いて飛びつく人も多いですが、落とし穴もあるのでご注意ください。

この「事業承継税制の特例措置」については、まるで贈与税・相続税が免除されるように思い込んでいる方もいるようですが、「猶予」と「免除」ではまったく意味が異なります。

メリットだけではなく、納税を先送りすることで生じるデメリットにも目を向けることが重要です。

これを機に、概要を確認しておきましょう。

 

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【公的な相談窓口の利用だけでなく専門家への相談も】

中小企業庁は中小経営者に向けて、日本全国に「事業引継ぎ相談窓口」や「事業引継ぎ支援センター」を設置しています。

これらの窓口では「事業承継」に関するアドバイスが受けられるほか、情報提供やマッチング支援なども行っています。

相談窓口のほか、中小経営者に向けたセミナーを開催している自治体も。

こうした各自治体が実施しているサポートにも、しっかりと目を向けておきたいもの。

「事業承継」の計画を立てる際には、ある程度の専門知識が必要になるケースもあるため、第三者の力を借りることも積極的に検討しましょう。

公的な窓口以外にも「事業承継」の相談先は数多く存在しています。

どの相談先であっても中小企業を助けてくれますが、相談先によってサービス内容やサポート内容は大きく異なるので注意が必要です。

相談先の強みと弱みを理解しておきましょう。

以下では「事業承継」の主な相談先と、各相談先の強み・弱みを簡単にまとめてみました。

事業承継の主な相談先

<中小企業庁の公的機関>

(強み)

・公平、公的な観点からアドバイスを受けられる

・無料で利用できる

(弱み)

・専門家の支援を受ける形になると、コストが発生する

<会計事務所や法律事務所>

(強み)

・専門的な観点からアドバイスを受けられる

(弱み)

・相談料などの費用が高額になるケースも

・すべての事務所がM&Aに詳しいわけではない

<商工会議所>

(強み)

・入会済みの場合は、無料で利用できる

(弱み)

・専門家の支援を受ける形になると、コストが発生する

<M&A仲介会社>

(強み)

・実績が豊富

・独自のノウハウやネットワークがある

・専門家と連携

(弱み)

・業者によって経験、ノウハウ、報酬体系などが大きく異なる

 

公的な窓口などに相談をすると、結局は専門家を紹介される形になるケースが多いもの。

また、弁護士などの士業については、得意分野に偏りも。依頼する業務の範囲を慎重に決める必要があります。

有力な選択肢の一つとしてのM&A仲介会社

以上のことから、円滑に事業承継を進めるためには「M&A仲介会社」が望ましい選択肢になるケースがあります。

計画立案の段階から手広くサポートしてくれることが多い仲介会社なら、経営者の手間も大きく削減できることでしょう。

中小企業庁から出されている様々な制度を活用しながら、M&Aの専門家を活用することをご検討いただきたいと思います。

 

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みどり財産コンサルタンツが「事業承継」のお手伝いをします

みどり財産コンサルタンツは、M&A専門アドバイザーが在籍するM&Aを得意とする会社です。

後継者不在で経営者の希望が「売却」という選択肢の場合は、親族外の第三者役員への引継ぎ、従業員への引継ぎ、またはM&Aを行った場合の第三者への引継ぎまでご支援させていただいております。

事業を引き継ぐだけにとどまらず、「事業承継」をきっかけに、財務的に会社を強化することを使命として取り組んでいるからです。

みどり合同税理士法人グループは会計事務所が母体となっているため、財務的・知識的なベースがあり、民法、会社法上の知識も豊富なため、「事業承継」における「全体のアレンジ」が可能となっております。

たとえば、株式のアレンジをしながら、不動産鑑定士・司法書士・弁護士など士業と連携を強化し、プロジェクト化。ワンストップで業務分担を仕切り、進行。

確実にクロージングできることが強みです。

これに加えて、金融商品などを組み合わせ、活用し、問題解決・最良案に導くことができる点が最大の特徴でしょう。

また、必要に応じて優遇税制や補助金の活用提案をいたします。

認定支援機関であるグループ会社・みどり合同税理士法人と共に申請をワンストップで支援。

事業承継税制などの各種税制の申請サポートのほか、M&A後のアフターフォローも万全です。

 

どうかお気軽にご相談ください!

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※事業承継税制に関する具体的なご質問は、中小企業庁へ直接お問い合わせください。

(お問い合わせ先)

中小企業庁事業環境部財務課

電話:03-3501-5803(直通)

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