コラム Column

2020年02月18日

百貨店に見る変化対応の難しさ

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2020年2月17日の日経新聞に「大沼破綻で空洞化拍車 山形、百貨店ゼロ県に」という記事が報じられています。

山形市の老舗百貨店、大沼が2020年1月27日、山形地裁に自己破産を申請しました。

大沼は、創業320年。

日経新聞記事によれば、1月26日日曜日の閉店後に従業員に解雇を告げ、1月27日月曜日に自己破産申請したそうです。負債総額は25億円で、退職金を合算すると30億円前後になる見通しとのこと。

高コスト体質の是正や契約条件の変更が難しく、そこに2019年の消費税増税を機に異次元の売上の落ち込みが襲ったとの経営陣の説明です。

突然解雇された大沼本体の解雇者は190人に上り、78社のテナント従業員266人、取引先も含めると500人規模の雇用に影響が広がっているそうです。

顧客にも大きな影響があります。2019年2月時点で残高が3億9,000万円だった友の会の積立金や、発行残高が5億円の商品券などについては半額は保全される見込みのようですが、残りの取り扱いは未定で債権者説明会は6月とのこと。全国百貨店共通商品券であっても大沼が発行したものは、使用できなくなります。金券には、ワイシャツお仕立券など様々なものがあり、種類によって返還方法が異なり、手続きは煩雑です。

 大沼は、4月の新入生向けのランドセルや学生服の注文を受けているそうです。顧客に商品を優先的に引き渡せるように管財人に依頼するとのことですが、4月に間に合うでしょうか…。

 

山形市にはかつて10店近くあった中心地の大型店が、今回の大沼の経営破綻で、全て姿を消しました。

2020年8月末にそごう徳島店が閉店する徳島県が全国初の「百貨店ゼロ県」になるはずでしたが、大沼の経営破綻で山形が全国初の「百貨店ゼロ県」になってしまいました。

「百貨店ゼロ県」は地域の衰退を象徴すると記事では解説しています。地方都市では百貨店や大型商業施設の閉店が相次いでおり、中心市街地の商業機能がほとんど失われる段階に入っているとのこと。

 

遡って2020年2月5日の日経新聞に「三越再生、ビックカメラと 創業の日本橋でフロア賃貸」という記事が掲載されていました。

三越伊勢丹ホールディングスが2月7日に、百貨店発祥の地である三越日本橋本店にビックカメラを開業したそうです。百貨店が売り場を貸す「不動産モデル」ですが、三越が接客や売り場づくりで協力するそうです。

アパレルに代表されるように従来の百貨店モデルが苦戦するなか、不動産モデルが広がりを見せています。記事では、J・フロントリテイリングの例が紹介されています。

J・フロントリテイリングは、主力の松坂屋名古屋店で2015年にヨドバシカメラを誘致。2017年には全館が不動産型の「GINZA SIX」を開業。足元では、不動産モデルが営業利益の3割を稼ぐそうで、2016年度との比較で2019年度の連結営業利益は13%増の470憶円を見込むそうです。

 

百貨店は、各地域の一等地に大きなフロアを持っています。この立地に注目して、不動産業にシフトするのは生き残りのための選択肢と言えそうです。

三越伊勢丹HDとビックカメラの取り組みは、百貨店流の高級感を共同でつくる新たな試みでもあると記事では解説しています。ビックカメラ三越日本橋店のWEBサイトを見ると、確かに、有料ではありますが、様々な細かいサポートを受けることができそうです。

WEBサイトを見ていると、これは「シニア対応」ではないかと感じます。シニアマーケットをいかに取り込んでいくかということがこれからのビジネスでは大きなテーマになります。

百貨店の「不動産モデル」+「シニア対応」ということであれば、素晴らしいアイデアに思えます。しかし、ライバルはAmazonや楽天などの流通プラットフォーマーや、郊外のショッピングモール、家電量販店です。「不動産モデル」に百貨店の色を入れようとする試みは奏功するでしょうか。三越日本橋本店ではうまく行っても、地方の百貨店が真似できるような再現性の高いモデルになるでしょうか。

ビジネスは常に変化対応が求められますが、その難しさを感じます。